一途な皇帝陛下の秘恋〜初心な踊り子を所望する〜

夜も更けて、どうにかギリギリで舞台に辿り着いた一行は、夕飯もそこそこに舞台の準備にと取り掛かる。

晴明もただの護衛になりきり、自ら率先してその舞台準備を手伝っている。

香蘭は春蘭の横に並び、髪結師に頼み髪を整えお化粧を施している最中だ。

「ねえ。貴方の婚約者…何で舞台準備を手伝ってるの?護衛の格好は仮の姿なのは分かるけど…どっかの高貴な人なんでしょ?
それくらいは立ち振る舞いを見れば直ぐに分かるけど…それにしてはやたら…働き過ぎじゃない?」

「多分…普段身体を使って働かない分、楽しいのだと思います。」
あっちにこっちにと率先して荷物を運ぶ晴明は、今までになく生き生きしていて楽しそうだ。

「まぁ、ただ者じゃないって事は分かったわ。気を付けなさいよ。自由だと言われたって、知らぬ間に手の上で転がされているコマの一つかもしれないんだから。」
春蘭はそう言って香蘭を脅す。

「大丈夫。彼はとても信頼できる人だから、嘘偽りは言わないわ。」
晴明の事は信じてやまない香蘭は、愛おしそうに晴明を見つめている。

それを羨ましいと思ってしまう春蘭がいる。
私にも誰か身請けしたいって名乗り出てくれる輩はいないのかしら…。
全くみんな弱虫ばっかり。春蘭はそう思い、深いため息を一つ吐く。