次に晴明が意識を取り戻した時に、馬車は何事もなかったかの如く、目的地を目指し先を急いでいた。
晴明は、香蘭の膝を枕にして馬車の揺れさえも心地良く感じて、しばらくこのままでいたいと願う。
「…それにしても、婚約した事どうして教えてくれなかったの?」
春蘭はそう言って、香蘭を恨めしそうに睨む。
晴明が目覚めた事に気付かない馬車の中では、女子達のお喋りが繰り広げられていた。
寧々は晴明の代わりに馬に乗って、馬車の後ろを守るように着いて行く。
馬車の中には香蘭と春蘭、そして狸寝入りをする晴明の3人だけだ。
「いろいろ複雑な理由があって…言い出せなかったのごめんね、春蘭…。」
香蘭は晴明の温もりを膝に感じながら、少し恥ずかしそうにしている。
「見たところ、身請けも簡単にしてくれそうな婚約者じゃない。なぜ、まだ貴女はここにいるの?」
説教にも似た口調で春蘭は話を続ける。
「…私が…最後の一年を踊り子として生きたいと…望んだの。」
「バッカじゃないの?踊り子なんかに縛り付く意味なんて無いわ。踊りなんてただの生きる為の手段であって、目的なんかではないわ。私だったら今直ぐ辞める。」
春蘭の投げ付ける言葉は、時として冷たくハッキリしている。
睨まれるようにそう言って香蘭を困らせる。
「貴女だったらきっと潔く辞めるでしょうね…
私は…踊る事が好きだったのかしら…生きる手段でしかなかったのに…いつしか去らなければいけない気持ちが重なって、急に惜しくなったのかもしれない。
旅を続けるのは…単に私のわがままなのかもしれないわ…。」
その結果、大事な人の命まで危険にさせて…私はなんて罪深い…。
そう思うと、また涙が溢れ出す。
「貴女が居なくなればせいせいするわ。
私、ずっと貴女が嫌いだった…私がどれだけ頑張って1番を張って来たか知らないでしょう?
私が努力してやっと出来た事を、いつだって器用にすんなりとこなしていた。
なのに…欲もなくただふわふわと生きてるだけの、貴女なんて大嫌いよ。
手を差し伸べるてくれる人の恩も知らず、何をのほほんとこんな所に居るのよ。」
春蘭の言葉がやたら胸に刺さる。
彼女は正しい。
…先程の事があって自分の不甲斐なさは、充分身に染みている。護衛がこんなにいるのも…本来なら晴明を守るべき人達を巻き込んだこの旅は、単なる私のわがままでしかない。
「…本当に…春蘭の言う通りだわ。
私がバカだったの…大切な人の命を晒してまで…とうすべき、事では…決してなかったのに…。」
意識を手放してもなおずっと握られた手は、暖かな温もりに包まれている。その手を見つめて香蘭は猛省する。
抑えていた涙が再び溢れ出し、膝で眠る晴明の頬に降り注ぐ。
香蘭はそれに気付いて、慌てて懐にある布巾を探す。そのタイミングで大きな手がおもむろに伸びて来て、香蘭の濡れた頬を親指でそっと拭う。
それをあたかも当たり前のようにペロリと舐めて見せるから、香蘭はドキッと動揺してその手を掴んでしまう。
「せ、晴明様…目が覚めたのですね。」
ホッとしたと同時に心臓はバクバクだ。
「ああ、あまりに寝心地が良くて起きたくない衝動に駆られていた。どのくらいこうしていた?」
寝たままの姿勢で話す晴明は、2人の時に見せる甘い微笑みをくれる。
春蘭が同じ馬車にいる事に気付いてないのだろうかと、香蘭はいらぬ心配をする。
「えっと…多分1時間ほどでしょうか…?
既に村に入ったようで、先程とは外の景色が変わってきました。」
晴明の甘い視線から逃げるように車窓に目を向ける。
晴明は、香蘭の膝を枕にして馬車の揺れさえも心地良く感じて、しばらくこのままでいたいと願う。
「…それにしても、婚約した事どうして教えてくれなかったの?」
春蘭はそう言って、香蘭を恨めしそうに睨む。
晴明が目覚めた事に気付かない馬車の中では、女子達のお喋りが繰り広げられていた。
寧々は晴明の代わりに馬に乗って、馬車の後ろを守るように着いて行く。
馬車の中には香蘭と春蘭、そして狸寝入りをする晴明の3人だけだ。
「いろいろ複雑な理由があって…言い出せなかったのごめんね、春蘭…。」
香蘭は晴明の温もりを膝に感じながら、少し恥ずかしそうにしている。
「見たところ、身請けも簡単にしてくれそうな婚約者じゃない。なぜ、まだ貴女はここにいるの?」
説教にも似た口調で春蘭は話を続ける。
「…私が…最後の一年を踊り子として生きたいと…望んだの。」
「バッカじゃないの?踊り子なんかに縛り付く意味なんて無いわ。踊りなんてただの生きる為の手段であって、目的なんかではないわ。私だったら今直ぐ辞める。」
春蘭の投げ付ける言葉は、時として冷たくハッキリしている。
睨まれるようにそう言って香蘭を困らせる。
「貴女だったらきっと潔く辞めるでしょうね…
私は…踊る事が好きだったのかしら…生きる手段でしかなかったのに…いつしか去らなければいけない気持ちが重なって、急に惜しくなったのかもしれない。
旅を続けるのは…単に私のわがままなのかもしれないわ…。」
その結果、大事な人の命まで危険にさせて…私はなんて罪深い…。
そう思うと、また涙が溢れ出す。
「貴女が居なくなればせいせいするわ。
私、ずっと貴女が嫌いだった…私がどれだけ頑張って1番を張って来たか知らないでしょう?
私が努力してやっと出来た事を、いつだって器用にすんなりとこなしていた。
なのに…欲もなくただふわふわと生きてるだけの、貴女なんて大嫌いよ。
手を差し伸べるてくれる人の恩も知らず、何をのほほんとこんな所に居るのよ。」
春蘭の言葉がやたら胸に刺さる。
彼女は正しい。
…先程の事があって自分の不甲斐なさは、充分身に染みている。護衛がこんなにいるのも…本来なら晴明を守るべき人達を巻き込んだこの旅は、単なる私のわがままでしかない。
「…本当に…春蘭の言う通りだわ。
私がバカだったの…大切な人の命を晒してまで…とうすべき、事では…決してなかったのに…。」
意識を手放してもなおずっと握られた手は、暖かな温もりに包まれている。その手を見つめて香蘭は猛省する。
抑えていた涙が再び溢れ出し、膝で眠る晴明の頬に降り注ぐ。
香蘭はそれに気付いて、慌てて懐にある布巾を探す。そのタイミングで大きな手がおもむろに伸びて来て、香蘭の濡れた頬を親指でそっと拭う。
それをあたかも当たり前のようにペロリと舐めて見せるから、香蘭はドキッと動揺してその手を掴んでしまう。
「せ、晴明様…目が覚めたのですね。」
ホッとしたと同時に心臓はバクバクだ。
「ああ、あまりに寝心地が良くて起きたくない衝動に駆られていた。どのくらいこうしていた?」
寝たままの姿勢で話す晴明は、2人の時に見せる甘い微笑みをくれる。
春蘭が同じ馬車にいる事に気付いてないのだろうかと、香蘭はいらぬ心配をする。
「えっと…多分1時間ほどでしょうか…?
既に村に入ったようで、先程とは外の景色が変わってきました。」
晴明の甘い視線から逃げるように車窓に目を向ける。



