一途な皇帝陛下の秘恋〜初心な踊り子を所望する〜


夢のような1日が開け、空も明るく晴れ渡った。

晴明も護衛に扮して香蘭の乗る馬車の後を守る。
昨日の遅れを取り戻す為、今日は夜まで馬車に乗り続けなければならない。

香蘭は車窓からそっと晴明を見つめる。

乗馬は疲れないのだろうか…朝からずっと走り続けて今は林の中、登ったり下ったりの繰り返しだ。

「あの、そろそろ休息しませんか?」
珍しく香蘭が副座長の乗る馬車に声をかける。

「…まだまだ次の町まで時間がかかる。今夜の講演は7時からだ。間に合わせなければならない。」
副座長は何があっても公演に穴を空けないつもりだ。

「せっかく姐様が勇気を振り絞って言ったのに…。」
寧々は香蘭を擁護する。

「護衛の方達が疲れてしまうんじゃないかと心配です。」
香蘭は晴明を思ってそう言う。

コンコンコン。
馬車の窓ガラスをノックしてくる音がして、窓外を見れば護衛に扮した晴明がいる。

「どうされましたか?」
同馬車には春蘭もいるから、下手に普段のようには話せない。

「鈴蘭殿、お疲れですか?」
晴明が気にするのはどこまでも香蘭の事だ。

「いえ…乗馬の方が大変かと…大丈夫ですか?」

「我々は乗馬に慣れていますから、馬の上でだって寝れるくらいです。気にされないで下さい。
しかし少し休憩は必要かと。」

晴明は香蘭を見つめて微笑む。
もちろん頭巾を被っているから目元しか分からないのだが、香蘭は晴明の乏しい喜怒哀楽がなんとなく分かるようになってきた。

晴明は周隊長に目線だけで指示を出す。
周隊長は軽く頭を下げ、前の副座長が乗っている馬車へと馬を走らせる。

どう見ても上下関係がバレてしまう瞬間だったから、事情を知る香蘭はそんな2人を見てあたふたとしてしまう。

特に他の護衛兵達が怪訝な顔を向けている。

まもなくして、馬車は止まり少しの休息を取ることになった。