一途な皇帝陛下の秘恋〜初心な踊り子を所望する〜

「ああ、そうだ。肌がかぶれるといけない。腕飾りを外した方が良い。」
ハッと気付いた晴明が、香蘭の左腕に輝く王家の紋章を彫り込んだ金の腕飾りを外す。

「どこか痛むところはなかったか?
サイズを合わせて作り直させたが、なにせ時間が無かったからな。」
そう言って、香蘭の手首を注意深く観察している。

「大丈夫です。最近ではつけている事も忘れるくらいしっくりしてましたから。逆に取ってしまうとなんだかスースーして気持ちが落ち着きません。
…晴明様も外した方が良いのでは?」

香蘭はおもむろに振り向き、別れ際に預けたお守りのペンダントに触れる。
それが今でも晴明の首に下げられている事に気付いた時から、胸が踊るほど嬉しく感じていたのだ。

「これは、ある意味本当に俺を守ってくれた。」

「肩身離さず付けてくださっていたのですね。嬉しいです。」
フワッと微笑みを浮かべ、大事そうにペンダントにそっと触れる。

「香蘭の大事な物だからな。無くす訳にはいかぬ。
…それでも壊してもいけないから外しておくか…。」

仕方がないと言う風に首からペンダントを外し、香蘭の腕輪の横に並べて置く。

「そういえば、この翡翠には模様が刻まれていたのは気付いていたか?」

「はい…。気づいたのは大人になってからですけど。」
そう言って香蘭はペンダントを近くにある行灯の前にかざす。

刻まれた鷹の飛び立つ模様が金色に輝き出す。

「これはかなり手の込んだ価値のある物だと見える。よく手離さずに持っていたな。」

「実は…孤児院にいた時に一度は売り払われそうになったのですが、司祭様が大事な形見は手離させるなと…孤児院の先生を止めてくれたんです。それから直ぐに一座に引き取られましたが、誰にも決して見せないようにしていました。」

「そうか…。それほど大事な物を俺に預けてくれたのだな。それは考え深い。」

晴明は、あの秀英に少しでも晒してしまった事を思い出し胸がチクリと痛んだ。