瞬きした瞬間に、目の前に兄の虎鉄が現れる。
「寧々、陛下に向かって生意気な口を叩くな。もっと主君を敬うべきだ。」
そう怖い顔で一喝される。
そして、風の如くに陛下の前に両膝をつき両手を前に回して臣下の礼をとる。
兄にとって皇帝陛下は崇拝していると言っても良いほど絶対的存在だ。
「虎鉄特に呼んではないぞ。」
「我が妹が陛下に対して、生意気な口を聞き大変申し訳ありません。後でキツくお灸を添えておきますのでどうかお許し下さい。」
「寧々の説教は今に始まった事ではないから気にしていない。それよりも、香蘭がそなたに挨拶したいと申していた。香蘭、コイツが寧々の兄の虎鉄だ。」
私の戯言など気にも止めず、隣に座る姐様に兄を紹介している。
「あっ…!一度お会いしてますね。香蘭と申します、どうぞよろしくお願い致します。」
姐様は立ち上がり、頭を下げて丁寧に挨拶をしている。
「ご婚約者様にはご挨拶が遅れまして、大変申し訳ございません。実はこの旅の初めから陰ながら警護させて頂いておりました。
虎鉄と申します。お見知りおきのほど…。」
どこまでも生真面目でとっつき難い兄は、姐様にも臣下の礼を取り、姐様は少し戸惑いを見せる。
「そんなに畏まらないで下さい…それよりもずっといらしてたのですか…!?
全く気付けませんでした。一緒に旅をしていたなんて…」
「陛下より香蘭様を警護するようにとの命を受け、秘密裏に同行しておりました。」
香蘭は陛下と虎兄を交互に目で追う。
「えっ?!では…晴明様は誰が守っているのですか?」
自分の事よりも真っ先に姐様は陛下の事を心配する。
「俺には虎鉄の部下が着いているから案じるな。それに自分の身ぐらい自分で守れる。」
「陛下は剣術には長けていて、右に出る者がいないほどの腕前ですから。」
と、虎鉄がすかさず援護する。
「そうなんですね。」
と、姐様は少しホッとした表情になる。
…それにしても…誰も何も言わないのを良い事に、陛下は先程から姐様の手を握り続けている。
この状態を誰も咎めないのは良いのだろうか…?
少し離れていたくらいでここまで執着するのはよっぽどだと思う。
確かに少しおやつれになった様子の陛下は疲労困憊なんだと思うが…。
人は恋をするとこんな風に変わってしまうのかと思うほど、陛下の甘い雰囲気にいささか慣れず心配になるほどだ。
「寧々、我々は少し席を外そう。」
兄がそう言って、私を部屋から連れ出そうとする。
「ここは私と姐様の部屋です。陛下はどうせ広い部屋をお取りなんですよね。陛下がそちらに戻れば良いではありませんか?」
「寧々!少し言葉を慎みなさい。」
兄に引っ張られ仕方なく退室するが、不服な顔で兄様に一言物申す。
「あの感じで公に出られたらマズイですって
…陛下の威厳に関わりますよ。」
「陛下も時と場合を考えていらっしゃる。
我々は身内みたいなものだと思って下さってるに過ぎない。お前も香蘭様のようにもう少しお淑やかにしないと、嫁の貰いても現れないぞ。」
兄様に咎められるが、私は気にも留めない。
「私は私が選んだ人と一緒になります。それにまだまだ結婚なんてしませんからね。」
フンッと兄に一瞥してその場を後にした。
誰がなんと言おうとも、私は出来るだけ長く姐様の側にいるんだから。と、心に決めている。
「寧々、陛下に向かって生意気な口を叩くな。もっと主君を敬うべきだ。」
そう怖い顔で一喝される。
そして、風の如くに陛下の前に両膝をつき両手を前に回して臣下の礼をとる。
兄にとって皇帝陛下は崇拝していると言っても良いほど絶対的存在だ。
「虎鉄特に呼んではないぞ。」
「我が妹が陛下に対して、生意気な口を聞き大変申し訳ありません。後でキツくお灸を添えておきますのでどうかお許し下さい。」
「寧々の説教は今に始まった事ではないから気にしていない。それよりも、香蘭がそなたに挨拶したいと申していた。香蘭、コイツが寧々の兄の虎鉄だ。」
私の戯言など気にも止めず、隣に座る姐様に兄を紹介している。
「あっ…!一度お会いしてますね。香蘭と申します、どうぞよろしくお願い致します。」
姐様は立ち上がり、頭を下げて丁寧に挨拶をしている。
「ご婚約者様にはご挨拶が遅れまして、大変申し訳ございません。実はこの旅の初めから陰ながら警護させて頂いておりました。
虎鉄と申します。お見知りおきのほど…。」
どこまでも生真面目でとっつき難い兄は、姐様にも臣下の礼を取り、姐様は少し戸惑いを見せる。
「そんなに畏まらないで下さい…それよりもずっといらしてたのですか…!?
全く気付けませんでした。一緒に旅をしていたなんて…」
「陛下より香蘭様を警護するようにとの命を受け、秘密裏に同行しておりました。」
香蘭は陛下と虎兄を交互に目で追う。
「えっ?!では…晴明様は誰が守っているのですか?」
自分の事よりも真っ先に姐様は陛下の事を心配する。
「俺には虎鉄の部下が着いているから案じるな。それに自分の身ぐらい自分で守れる。」
「陛下は剣術には長けていて、右に出る者がいないほどの腕前ですから。」
と、虎鉄がすかさず援護する。
「そうなんですね。」
と、姐様は少しホッとした表情になる。
…それにしても…誰も何も言わないのを良い事に、陛下は先程から姐様の手を握り続けている。
この状態を誰も咎めないのは良いのだろうか…?
少し離れていたくらいでここまで執着するのはよっぽどだと思う。
確かに少しおやつれになった様子の陛下は疲労困憊なんだと思うが…。
人は恋をするとこんな風に変わってしまうのかと思うほど、陛下の甘い雰囲気にいささか慣れず心配になるほどだ。
「寧々、我々は少し席を外そう。」
兄がそう言って、私を部屋から連れ出そうとする。
「ここは私と姐様の部屋です。陛下はどうせ広い部屋をお取りなんですよね。陛下がそちらに戻れば良いではありませんか?」
「寧々!少し言葉を慎みなさい。」
兄に引っ張られ仕方なく退室するが、不服な顔で兄様に一言物申す。
「あの感じで公に出られたらマズイですって
…陛下の威厳に関わりますよ。」
「陛下も時と場合を考えていらっしゃる。
我々は身内みたいなものだと思って下さってるに過ぎない。お前も香蘭様のようにもう少しお淑やかにしないと、嫁の貰いても現れないぞ。」
兄様に咎められるが、私は気にも留めない。
「私は私が選んだ人と一緒になります。それにまだまだ結婚なんてしませんからね。」
フンッと兄に一瞥してその場を後にした。
誰がなんと言おうとも、私は出来るだけ長く姐様の側にいるんだから。と、心に決めている。



