一途な皇帝陛下の秘恋〜初心な踊り子を所望する〜

香蘭はその逞しい腕に守られながら、眠れずに1人考えを巡らせていた。

皇帝陛下の正妃様…冴えない踊り子の自分に務まる訳がない。だけど…演じる事は出来る…？のでは無いだろうか…。今だって舞台に立てば鈴蘭と言う踊り子を演じているに過ぎないのだから…

大切なのは身分でも立場でも無い。
この人を支えたいという思いだ。1人で立派に立ち向かう彼の役に立てるのであれば、喜んでこの身を捧げたい。

その思いさえ揺るがなければきっと、大丈夫。

晴明様は皇帝なんて誰でもなれると言うけれど、彼じゃなくてはこの平和な毎日は成り立たなかったと思う。彼は世の中の為にも、この国の未来の為にも無くてはならない存在なのだ。

耳をすませば規則正しい呼吸が聞こえて来る。
彼が今私の側で息をして、安らぎの中で眠っているその現実を大切にしたい。
揺るがない強さと真っ直ぐな意思を、陰ながらお支え出来れば本望だ。どんな形でも構わない…。

香蘭はそう思い、いつの間にか意識を手放していた。