それは、初めて寝坊してしまった朝だった。
いつもであれば自然と目が開いて起きることができるのに、今日だけは違ったみたいで。
だって聞こえない生活音が、なかったから。
わたしが目覚めたときにはもう、屋敷内はしんと静まり返っていた。
「ゆーみ…?じ、ろ…?」
矢野さん?鹿波さん……?
みんなどこにいるの…?
探しても探しても人ひとり見当たらない。
ちがう世界に来てしまったみたいだ。
それか、これは夢。
まだ夢のなかにいて、意識だけが取り残された明晰夢。
《お昼の手話ニュースのお時間です。まずは本日の天気予報から───》
関東圏は極めて晴れだと、天気予報では言っている。
空の青さなど分からないくらい、わたしだけが取り残された大きな屋敷。
ポツンと、ずっと居間に座っていた。
どこに行こうにも行けない。
誰に連絡しようにも意味がない。
待つしか、わたしにはできない。



