「おい居ねェのかーーー!?居留守してんのは分かってんだからなァーーー!!」
ドアが、揺れている。
外側から強く叩かれたような振動がシューズボックスにまで伝わって、意味のない消臭剤が落ちた。
誰かがドアの外に…………いる。
「…カシラ、明らかに中にいます。足音が聞こえました。どうします?」
「どうしますって、開ける以外の選択肢あんの?さっさと片付けて帰りたいんだけど俺」
「了解です」
ドクドクドクドクと心臓が鳴り出した。
聞こえないわたしでも感じることのできる、自分からの唯一だ。
押し入れに身体を詰め込んだわたしには足音さえ聞こえてこなかったが、他人の匂いだけは分かった。
「うわっ、散らかってんなあ…。何年前のソースだよ……。なァんで金にだらしない女ってのは、私生活もだらしないんスかねえ」
「で、矢野(やの)。その女は結局なにしたんだっけ?」
「ホストの売り掛けを飛びまくった挙げ句問い詰められて、とうとう複数の闇金に手を出したものの払えず今。その闇金会社が、ウチの傘下というわけです」
「…ふーん。つまんな」



