「……………」
今より若い。
若いけれどわたしよりは年上で、髪の毛の色が真っ黒。
白のほうがあなたには似合うよと言ってあげたいくらい。
そんな彼よりも、いっしょに写った綺麗な女性に目を奪われた。
ふたりで楽しそうに笑っている。
わたしに手を回してくれた優しさよりも、きっとそれは温かいんだろう。
大人しそうに微笑む女性をうしろから抱きしめるように、写真のなかのゆーみは無邪気な顔で笑っていた。
「怒られるぞ」
「っ!」
ひょいっと背後から写真を奪われてから、気づく。
メガネをかけた矢野さんは表情をまったく変えず、わたしに手話を使ってきた。
“カシラには黙っておく。はやく仕事に戻れ”
”これ、お仕事だよ”
“ここの掃除はしなくていい”
いつ覚えたの、手話。
わたしのために覚えてくれたのか、それもまた暇つぶしのひとつか。
流暢に通じる会話には逆に違和感があった。



