「あっ、ちょっ、ニコ!」
ムキになって、水が入ったバケツを持って大股歩きに場所を離れる。
「おいっ、こぼれてるっつーの!!待てニコ…!」
「拭いとけよ、ジロー」
「はあ!?なんでオレが!!って、矢野さん!!前だってあいつ、白々とオレのせいにしたんスよ…!?」
わたしが向かった場所はゆーみの部屋だ。
勝手に入るなとは言われているけれど、わたしは使用人。
お掃除することがお仕事だ。
これは仕事だと言い聞かせて、まずは家具に付着したホコリを落とす。
(………あ、)
音を知らないわたしはいつも、落ちたものを発見してから「落としてしまったんだ」と理解する。
本棚に置かれていただろうフォトフレームは初めて見るものだった。
何回かこの部屋に来たことはあるけれど、今まで見なかったもの。
他の雑貨に隠されるように置かれていたものなのか、わたしはそっと拾う。



