朝、目が覚める。
わたし専用と言われたお部屋、用意された布団の上、ぼーっと木漏れ日を追いかけてからゆっくり身体を起こす。
厚みのある布団を畳んで、わたしサイズに揃えてくれた浴衣から服に着替えて。
居間に向かう途中、すれ違う顔たちは今では物珍しそうにわたしのことを見なくなった。
「おっすニコ!」
「ぶはっ!おまえ寝癖どうなってんだよそれ!」
「はやくしねーとジローにぜんぶメシ食われるぞー?」
わかったことが幾つかある。
このお屋敷は広すぎること。
舎弟たちは見かけによらないこと。
そしてゆーみは、この場所に居ないことのほうが多いこと。
「うわあ…、マジこぼしそう…」
「言うな言うなっ、フラグになっちまうだろ…!」
朝からさっそくお仕事は始まる。
それはおぼんに乗った朝食を落とさぬように運ぶことだ。
矢野さん含め、舎弟たちの何人かは一緒に食べる日もあるようで、わたしは台所から彼らの朝ごはんを居間へと移動させる。



