「そこまで隠さなきゃいけない存在には見えないけどねえ」
「…いえ。何者かから守るため、じゃないかと」
「……父親は極悪人か何かなの?」
「断言できませんが、言えることはひとつ。そんなことができるのは……私たちのような人間だけです」
あーあ。
また面倒なことになりそうだ。
「へえ」と、とりあえずは興味ない顔を浮かべておいた。
「あ、そうだこれ。明日こいつにやっといてよ。おまえからって言えばいいから」
ピンクと水色が混ざったギンガムチェック。
派手めな色のほうが、見失ったときに見つけやすいと思った。
「…エプロンですか。三角巾も」
「たまたま通りかかった店にあってさ。安かったから買っといた」
「……たまたまと言うわりにはサイズもぴったりなようで。相変わらずお優しいですね、“憂巳坊っちゃん”」
「だまれ」
さあニコちゃん。
ここまでしてあげてる恩は返さなくちゃだ。
たとえこれからどんなことがあったとしても、逃げるだけは許さないよ俺。



