「お疲れさまです。商談のほうは上手くいきましたか」
「よゆー。けど、もう当分は松林のとこだけは勘弁」
「カシラはとくに気に入られていますからね。あなたが今後も出向いてくれれば、余計な手間が省けます」
「無理だから。吐く」
夜中の12時ちょうど。
この時間にわざわざ実家に戻ってくるとか面倒なこと、今まではするはずもなかったんだけど。
新しい顔が増えたこともあってか、気づけば俺は屋敷にたどり着いていた。
だとしても結局は矢野が迎えてくれるだけで、本人はスヤスヤと夢の中。
「こいつ、今日は何してた?」
「バケツをひっくり返して、ジローのせいにしていました」
「よしよし。いい感じに育ってるね」
幸せだろう夢から起こさない程度に頬を撫でる。
こんなに柔らかいんだから、俺なんかが堂々と触ったなら壊してしまいそうだ。



