どんなに女を抱いたとしても満たされなかった心は、どういうわけか最近は実家に帰宅して無防備な寝顔を見るだけで満足するようになった。
「カシラ?先ほどから何を見ているんです?」
「えーぶい」
「あっ、そりゃ失礼しました!!こっちは片付いたんで、カシラもスッキリした次第で次のとこ行きましょう!」
なんだよスッキリした次第って。
ほんと俺の舎弟って馬鹿ばっかりで困る。
見るわけないだろ。
なんでこんな繁華街の錆びれた路地裏で、散々なくらい人間を脅して殴ったあとにAVなんか見るんだよ。
俺は確かに戦闘狂とか言われてるけど、サイコパスってわけじゃない。
「…こんな顔して笑うヤツだったんだ」
「へ?なんか言いました?」
「おまえ組内でかなり嫌われてるよって」
「………えっっ」
数日前に見つけた写真を、なぜか俺は常にスーツのポケットに入れてはふとした瞬間に見ていた。
この写真を拾った場所はとある団地の、散らかった部屋。
一人娘がこんなにも楽しそうな笑顔で写った1枚すら置いていった最低な母親なんか、忘れちゃっていーんだよニコ。



