ただ、ここに帰ってくると。
やっぱり考えてしまう、問いかけてしまう。
「おぁー…さん、……は?」
「……………」
「……おぁ、さん…っ」
立ち入り禁止のテープを避けながら、悠々とふたりは中に入る。
わたしに対して何かを言っている素振りはない。
「そこまで荷物ないっぽいけど、服とかだけでもまとめちゃって」
「はい」
また知らない顔だ。
わたしを平気で置いて、わたしになんか構っている暇なんかない、とでも言うような。
玄関前で泣くわたしなどお構い無しに彼らは人の家を漁っていた。
「カシラ、終わりました。あとはもういいでしょう」
「…ああ、うん」
ゆーみは何かをポケットに入れた。
くるりと振り返って、笑顔を消した顔で戻ってくる。
足を崩しているわたしを見下ろす瞳はすべてを凍らせてしまうほど冷たいのに。
そのなかにある、確かな温かさのようなもの。
「っ!」
ほら。
スッとしゃがんで、必ず目を合わせてくれるんだ。
「ここに、いる?」
もうお母さんは帰ってこないんだよ───、
「ずっと、ひとりで、いる?」
俺たちのとこのがたぶん楽しいよ───?



