そして今日もお下がりのパーカー。
さっき、ゆーみのお父さんはそんなわたしを見つめてほんの微かに瞳を和らげていた。
「ねえ、あの子じゃない?耳が聞こえないっていう…」
「ええ。お母さんは出ていったみたいよ」
「確かに遊んでそうな人だったものね。って、ちょっと。なんなのあの人たち……」
まだ3日間だ。
この場所を離れて3日目、帰ってきた今。
ただゆーみと矢野さんも一緒だったからか、立ち話をしていた奥様たちの目が瞬時に怯えたものに変わる。
「おいでニコちゃん」
クイクイと軽く手招きをされて、わたしはただ着いていった。
エレベーターはなく、階段で4階まで。
変だ。
それまで帰る場所だったというのに、ここまで落ち着かないなんて。
「あちゃー。やっぱこうなったかあ」
「そりゃあ、そうでしょう」
「ここまでする必要ある?やってること最低すぎるよ矢野」
「…どの口が言いますか」
玄関に貼られた立ち入り禁止のテープ。
まるで罪を犯した人間を真正面から指さすような徹底ぶりだ。



