やれやれと、おじさんは頭を振っている。
わたしはいつも周りにそんな顔をさせてしまう人生なんだ。
困らせてしまう。
思い詰めさせてしまう。
「聞き方を少し間違えたな。…耳が聞こえねェから、テメェは拾ってきたってのか?」
「………さあ?」
この感じは好きじゃない。
チクチクと四方八方いろんなところから鋭いナイフで刺されるみたいで、わたしはとても気分が悪くなる。
手持ちぶさたな気持ちでパーカーのポケットに手を突っ込んで───……あ。
「……俺にくれるのか」
「ニコ待って。それいちばん綺麗に作れたって、ずっと大事に持ってたやつでしょ」
おじさんにひとつ、べっこう飴。
これは昨日作ったもので、一昨日初めて作ったときよりまた上手に作れたの。
すれ違う男たちに見せると「懐かしい」と言ってみんな笑顔になるから、サランラップに包んでずっと持っていたものだ。
つやつや輝く黄金色は、見ているだけで楽しい。



