「まさかテメェ…、今度はこんな若ェお嬢さんに手ェ出したわけじゃねえよな…?」
「あんたの消滅した毛根と違って俺は女なんか余るほどいるんだよ。まあこいつは……新しい使用人?」
「………おい、見るからに未成年じゃねェか」
「だから?未成年だろうが熟年だろうが、利用するだけ利用するのが俺たちヤクザだろ」
どうしよう…、見られてる。
怖くなってそばにいたゆーみのうしろに隠れたものの、ゆーみ本人によって差し出された身体。
「名前はニコ。こいつね、音が聞こえないから」
「………どういう意味だ?」
「聞こえないんだよ、耳。…ただそれだけ」
ちょっとだけおじさんの目に動揺が見えた。
ふたりの親子が何かを話して、わたしを試すような仕草をしたところで。
ただわたしは、大人しく座っているだけ。
「…ね、聞こえてないだろ。簡単な単語とかは口の形から伝わるっぽいけど」
「………親はどこにいる」
「いない。借金の取り立てに行ったら娘だけ置いて逃げたサイアクな女だよ」
「で、身代わりに拾ってきたってわけか」
「まあね」



