「おーい、なんでこんなとこで寝てるんだよ。隣にベッドあんのに床って、落ちてダイレクトに転がりでもした?」
「────………、!」
「…あ。起きた」
いつの間にか寝てしまったみたいで、頬を撫でた鉄の匂いに目が覚める。
花に紛れなかった危ない香り。
ベッドではなく縁側。
雨がやんだら戻ってくるだろうかと、ここでずっと待っていた。
「………ぉぇ…ぃ」
「…………」
おかえなさい。
帰ってきてくれてよかった。
夕飯は出されたものを食べたよ。
すごく美味しくておかずがいっぱいで、びっくりしたの。
「ひとをいたぶって再起不能にしてきた男におかえりとか。…だいぶ間違ってるよ、おまえ」
寝ぼけているわたしの頬をぐいっと拭ってから、ひょいっと担ぎ上げる銀髪さん。
「じゃあちょっと付き合って」
彼はなにかを言っていた。
雨上がりの夜になぜか線香花火。
玄関前の広々とした石畳にしゃがんだ彼は1本、わたしに持たせてくる。



