「あのさー、くすぐったいってば」
黒に染まりきらない銀。
まっしろなこの色は、触ると雪みたいにふわふわだ。
「俺の髪さわるだけ好きに触っといて自分のことはなーんにも話してくれないとか。見た目によらずずいぶん生意気なお嬢さんなことで」
真ん丸いお月さまから遠ざかってゆく。
長い縁側を仄かに照らしてくれる暖色系の和モダンな間接照明を、ひとつひとつ数える。
「…これ、俺は掴まれたままなの?」
「……………」
「まあいっか。…おやすみ、また明日」
これは、兄妹?
それとも、家族?
いいえ、どちらでもありません。
ただひとつ、言えるとするならば。
世間からとんでもなく恐れられているらしい戦闘狂さんが、わたしのことだけはこの上なく可愛がってくれていると───。



