大きめのパーカーと、大きめのカーゴパンツ。
ベルトは新しく穴を開けてまで、わたしの腰のサイズに合わせてくれたみたいだ。
「おまえの服が一式揃うまでの辛抱だから。…って、聞こえてないか」
ぶかぶかなパーカーの袖、手が見えるようにくるくると捲ってくれる。
“それ、あげる”
使われたものは手話だった。
初めて彼とコミュニケーションがハッキリ取れた喜びに、わたしもすかさず“ありがとう”を手で返す。
「…ありがとう?で、いーの?…どういたしまして」
「おお!伝わったっスねカシラ…!」
心がほわほわする。
まっくろなスーツは、わたしが知っているまっしろより良いと思えるくらい。
だってこのひと、わたしに話しかけるとき必ず目と一緒に背丈までをも合わせてくれるんだ。
「…なに?ニコ」
にこ───と、言われている気がする。
なんとなく、でしかないけれど。
ずっとわたしのことをニコって。
気がつけば、銀髪さんの袖をきゅっと掴んでいた。



