「さすがに忘れるでしょーよ、そんなの」
『ふざけんな。俺にとっての2年は14年なんだよ馬鹿野郎』
「……うん。ふつーに意味わかんないや。とりあえず用済ませたら行くから」
『貸し3だからな』
「それは勘弁」
ここはもう無理やりにも切るしかない。
長電話はあまり得意じゃないし、単純に仕事なんかしたくないめんどい。
ピッと電話を切って、のんびりした気持ちでショップが建ち並ぶ比較的平和な繁華街を歩く。
「そっか、もう2年経つのかあ。…この歳になると毎日早すぎてたまんないわー」
いつかの生意気なベビーシッターがカナダへと旅立って、2年。
最初の頃は連絡が来てたけど、完全スルーを決め込んだのは俺。
おまえはもうこの世界から足を洗った人間だ。
とくに天鬼組でもある俺と関わってるなんて、なに考えてんのさ───と。



