「………憂……巳……っ」
ゆーみ、
ゆうみ、
─────憂巳。
「────ただいま」
いつも、ひょんなときに帰ってきて。
申し訳なさの欠片もない顔をして「ただいま」って言う。
どうせまた行っちゃうんでしょって、不安で掴むのはいつも私だったね。
それが今度は、彼から私に伸びてくる。
「ちょっとじっとしてて」
「っ…?」
涙でよく見えない。
憂巳の手が伸びてきて私の身体に回るかと思えば、そうではなく。
────カチャ、と。
両耳に何かが取り付けられた。
「おとちゃん」
ジーーーー、ジジッ、………ピッ。
────………ピピッ。
──────ザーーーー、
─────────ピピピッ。
「音都ちゃん」
これが、ずっと聞きたかった“音”なのだとすれば。
なんだこんなものかっていう強がりと、世界がまたキラキラと光でまぶしくてしょうがない奇跡。
「…ちが……う、……にこ…っ」
もしいつか、音が聞こえるようになったら。
最初はあなたの声を聞いてみたいと。



