「ゆーみ兄に怒られるぞ」
「ゆーみにい…?だれのこと?」
「…ニコの……コレっす」
ピッと小指を立てる海人。
聞こえない友達の驚きの声が聞こえた気がした。
「うそっ!?ニコっ、いんの!?あんた彼氏いたの…!?なになに遠距離!?」
………どういうつもりなの。
こういうときに一々出して、私の気持ちを揺らがせてくる。
私だってもう20歳なんだよ。
彼は、彼はどこかで元気に生きているの。
それでいいって、少しずつ思えるようになったのに。
「それでそれでっ!?その“ゆーみにい”ってどんなひとっ」
「……………」
「教えてよニコ~!友達と恋バナできるってかなり幸せなことなんだよ?」
「……………」
「もうニコってばあ~!!」
それよりもずっと海人を睨みつづける。
どこまで着いてくる気なのか不明だし、一花も一花で合コンなんかどこかへ行ったように私に質問攻め。
逃げるように足を進めて、近道しようと細い道に入ってしまったのがきっと───正解だったんだ。



