予期せぬ悲劇とは、このことだ。
こればかりはどうしようもない。
運命にだけは逆らえないのが人間の業(ごう)というものだ。
いや、業がイコールで運命に繋がっているのかもしれない。
「こんな世界に身を置いてた男だ。…天命はそれだったんだって思うしかできないよ、さすがに俺たちにも」
この人もいつか自分は急に命を落とすだろうと常に思って生きているのだろうか。
誰かに狙われるだけでなく、地獄のような世を生きている自分たちは神からも嫌われている───と。
そんなこと言ったら悲しむよ、娘と奥さんが。
「まあでも……俺も悔しいよ。月島は娘の障害を救うために行っただけだってのに」
遺体もハッキリせず、ろくなものが残っていなかったらしい。
そもそも月島は自分に娘がいること、家族がいることを組員には一切話しておらず、逆にずっと隠していたという。
それが、あの少女が戸籍登録されていなかった事実と繋がる。



