こんなことくらいなら大丈夫だろうという倦怠な意識が、後々になって大きな事件を引き起こす火種のようなもの。
きっと天道さんはそれを誰よりも知っていたんだと思う。
だからハッカーとして日々周りの動きを監視して把握しているんだ。
「ただね、あのカシラがさあ……」
見逃しちゃったのよ───と、彼はどこか嬉しそうに言う。
天鬼を代表する男2人が情に駆られて裏切り者を解放した、なんて広まれば確かに示しがつかない。
今でも「破門にして抹消した」ということで組には通っているらしい。
それもお人好しなことに、実際のところ金を渡して月島を海外に追いやったのだと。
「俺たちも馬鹿なことしたよ。そっから月島との連絡が綺麗に途絶えちゃって」
「……裏切られたってこと…?結局そいつは娘をダシにして金を奪ったってことじゃん」
「………事故で亡くなったんだ。これは本当の事故」
「え……?」
「飛行機の墜落事故、数年前にあったの知らない?カナダ行きの航空便がエンジン故障で…ね」



