「教えてよ天道さん。…月島 有志のこと、いいかげん話してくれよ」
「…教えたらおまえはもうベビーシッターもクビだけど、いーの?」
「……あんな意識高い小娘の世話しなくて済むなら…精々するね」
「だれの娘が意識高い小娘だって?」
頬を濡らしている涙をそのままにして、俺は天道さんを射抜く。
しばらくして「…はあ」とひとつ、ため息。
そして彼はスマホを取り出して誰かに電話をかけた。
「あのこと、話しちゃっていい?もちろん何かあったら俺が責任取るけど、まあ憂巳はそこは大丈夫だと思うからさ。……うん、恩に着るよ絃織さん」
それから俺は天道 陽太のうしろを追いかけて、とあるビルの屋上にたどり着く。
単にふたりだけで話す場を探したのと、景色がいい場所にでも移動したかったんだろう。
ちょうど空が黄昏に変わろうとしていた。



