「にい…ちゃん……」
「…言っただろう。雲雀会を背負うのは俺ひとりで十分だと」
「っ、だって俺のことっ、昔から弟だとも───」
「うれしかった。…おまえが生まれたとき、嬉しかった」
この男は……いったい誰なんだ?
昔から俺が想像していた兄貴という存在の幻想が、今になって目の前に現れたみたいだ。
「だがそれ以上に苦しかった。俺たちは普通じゃない、普通にはどうしたってなれない。だったら兄貴である俺がぜんぶ背負って……おまえだけでもと思ったんだ」
それはいつからの計画なんだよ。
俺が生まれた頃ってことは、あんたはまだ10歳にもなっていない。
その頃から俺のことを思って、自分は完全なる極悪非道な鬼の仮面を貼り付けたってことなのかよ。
「……うそだ。そんなの……嘘だよ、」
「ああ。それでいい」
「なに……格好つけてんだよ。俺が今までどんな思いで…ッ!!───っ、」
「ストップ、手ぇ出すのはナシ。話し合いができるうちはしっかり話さないと後悔するよ」



