「涼しい顔してるけど、たぶん焦ったんでしょ?やっと自分の計画通りに行ったと思ったらまさか弟が天鬼入りしちゃってねー」
「…………」
「確かにこの問題児すぎる弟よりは、きみのほうがカシラには向いてる。…おかしいと思ったのよ、そんな男がまーったく俺たち天鬼を相手にしないんだから」
「…………」
「雲雀会とはね、意外とややこしい柵(しがらみ)があったりするんだけど。でもそっちは何も仕掛けてこないから、俺たちもあれ?って感じだったよ」
否定を恐れないそいつは、たとえ相手が誰だったとしても間違っていたなら「くだらない」とか言って答えるはずだ。
けれどいつまで経っても天道さんに言われっぱ。
「まだわかんない?憂巳。ごめんよお兄ちゃん、ほんっと物わかり悪いのよこいつ」
「…それは俺も知っている」
「お。さすがお兄ちゃんだ」
俺のようになるな。
俺のようになればこの世界から抜けられなくなる。
そもそもこの世界自体が正しい道とは正反対なのだから、おまえは失敗作でいい。
婿に行けるなら家を出て、その先でこの世界を断ち切って生きていけ───、
なんで今さらになってこんな意味だったんじゃないかって、今まで考えもしなかったような考察ばかりが思い浮かぶんだよ……。



