なれるかな。
なっていいのかな、私が。
みんなに隠されて生きていたような私がね、聾学校の先生だって。
「かいと、今日……、いっしょ寝て」
「………むり」
「どう、して」
「…ゆーみ兄にいつかぶん殴られる」
“おまえ今すげーブスだから、マジでむりキツい”
口の動きと手話がちぐはぐ。
「ひどい……」
今日くらい夢に出てきて欲しいな…。
悪夢ばかりのなかで、それだけはたったひとつの光。
どこかで笑っていますように。
泣いていたら、涙を拭ってくれる存在が近くに居ますように。
『音なんかなくてもね、ニコニコ笑ってて欲しいから…ニコ』
ゆうみ、やっと分かったよ。
あなたがくれた名前はね、きっと私にとって初めての“音”だったんだ。



