「月島、この調子なら第一志望は余裕だぞ。…っと、いま書くから待ってな」
月島 ニコ。
苗字が変わると、周りからの違和感よりも自分自身が感じるほうが強かった。
どうしてその名前に戻ったのかは、自分でもよく分からない。
これからは本当の名前で生きなさい───と、別れる手前で矢野さんに言われて、私はせめて下の名前だけはと最後にワガママを言った。
「……なあ母ちゃん、これ焦げてね?」
「そっ、そうかしら…?ちょっと火加減が強かったかしらね…!ニコちゃんも無理しないでっ、って、食べちゃってるわ大変!」
「うげえニコ、おまえよく食えるよな」
「…?おいしいよ」
高校3年生、海人の家でお世話になっている私。
高等部に上がってきた海人とは、学校ですれ違ったときなんかはわざと無視をしてくる間柄だ。



