「まあまあお父さん、落ち着いて。なんだったら桜子さんも一緒にどうです?」
「おい誰がお父さんだよナメてんのか喧嘩うってんの、どっち?てか俺の嫁も口説くとか無理なんだけど。は???
やばいどーしよ、俺いまならおまえのこと真っ二つにしてオブジェにしてから踏み潰せる気ぃするわー」
「なにそれ。さすがに意味わかんないしつまんなすぎるよパッパ。ねえハルヒ」
「……最初っから腹立ってたけどさあ…、そこは大人の対応したんだよ俺。でもやっぱおまえは最初の時点で脳天殺っとくべきだったねクソガキ!!!」
「きゃあっ!もう陽太さんっ、びしょびしょになっちゃうわ…!」
「きゃー!あははっ、みんなでおふろー!」
“おまえだから”って言ってくれるような奴は、たぶん人生で1人はいると俺は思う。
もし2人いたなら幸運、3人だとしたらそれはもう……上々な人生だろ───、
いたよ、俺には2人も。
この世の中は物や言葉じゃどうにもできないことで溢れている。
綺麗事では解決できないのが俺たちの生きる世界だ。
ただそこに、こんな小さな光ひとつあれば。
俺たちのような男なんて、案外簡単にすくわれてしまうんだ。
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