「………、」
来るならこい。
どこからでも俺は準備ができてる。
久しぶりだ。
平和すぎる馬鹿みたいな毎日で、ちょうどカラダが少し鈍ってたんだよ。
小さくカタカタと震える全身も楽しんでしまうのが戦闘狂だ。
「ごめん、絃織(いおり)さん」
「……番犬にしては躾(しつけ)がなってねえぞ、陽太」
「まだ教育途中なのよ。番犬ってよりは息子みたいなもんかな」
「…まあおまえに育てられればな、こうなることも分かる気がする───が」
腕ごと取られて、背中で固められていた。
背後に回ったそこから低い声。
「でかすぎてやんちゃすぎる以上に煙(けむ)てえわ」
「はっ…?」
「俺に臭いうつったら責任取れよ」
俺が呆気ない反応をしているあいだに、そいつはどこからか取り出したスプレー型の消臭剤を俺に振りかけていく。
シュッ、シュッ、と、まんべんなく。
………なんだよこの状況。



