………まさか俺がこの過去をまた思い出す日がくるなんて思わなかった。
ああそっか。
ニコちゃんが隣にいないからだ。
「それか天鬼のカシラはそんなに根暗な奴なの?」
「だから言ったでしょーよ。ウチのアタマは俺以上の嫁バカ子煩悩なんだって」
「…嘘つくなよ」
「いやガチよ?っても、ちょうどこっち来てるらしいし。じゃあ会ってみる?」
そうしてようやく連れられた、天鬼組の本拠地。
俺の実家に造りは似ているが、やはりそれぞれの空気感というものがある。
妙にさっぱりとしていて、すれ違う男たちはもちろん俺に鋭い目を送ってくるが、同行している天道 陽太さえいれば問題はない。
「ああ、いたいた。久しぶりー」
「…久しぶりじゃねえよ陽太。頼んでた仕事───、」
血が騒いだ。
本能のようなものが、カラダの奥から。
漆黒をまとったオーラが桁違いなその男を目にした瞬間、意識とは裏腹に勝手に動いていたのだ。



