「皆さんにあまり迷惑をかけないように。
…楽しくやりなさい、ニコ」
「っ、やの………、────…おとう、さん」
背中を向けた彼の足が、ピタリと止まった。
そういえばいちばん最初、私を見つけてくれたのは矢野さんだ。
団地の押し入れに隠れた私をすぐに見つけたんだよね。
最初こそ怖かったものの、いつも私を気にしてくれていた。
早く寝なさい、それが終わったらご飯を食べなさい、なにかあったら言いなさい───必ずそう言ってくれたひと。
「……ありがと、……おとうさん」
舎弟たちにも配ってきたけれど、これがいちばん上手に作れたんだよ。
あのねお父さん、こんなにも上手に作れるようになったの。
そんなふうに渡してみたかったんだ、ずっと。
「…上手にできているな。……ありがとう」



