初めて会った海人のお父さんとお母さんは、初めて会った感覚がしないくらいフラットな人たちだった。
今日からここにお世話になる。
矢野さんは深くあたまを下げて、私が手にしていた荷物を海人に預けた。
「…ニコを頼むぞ、海人」
「……へーい」
「こら海人!もっとハキハキ返事しなさいよ!」
「いてっ!なにすんだよ母ちゃん…!」
「おほほほ、ごめんなさいね~」
「…いえ。賑やかそうでこちらも安心しました」
矢野さんも用事をわざと探すみたいに、なかなか帰ろうとしない。
こうなってしまうことは、案外みんなどこかで想像はしていたのかもね。
ただとうとうこの時がやって来てしまったのか……と、考えることもきっと同じ。
どんなことも愛着が湧いてしまうと、手放すことが惜しくなるんだ。



