「最低っスよ…、最悪っス、カシラ!!」
「……俺もうカシラじゃないけど」
「っ、憂巳さん!!」
「………おまえには迷惑かけたと思ってるよ、ジロー」
ちゃんと呼んだ名前に、久しく顔を合わせたかつての舎弟は瞳を揺らした。
久しく顔を合わせたってより、正しくは俺の居場所を死に物狂いで追ってきた。
いよいよ雲雀会に俺のウワサが回ったらしく、俺があの組を裏切ったと解釈している舎弟たちがほとんどだという。
まあそれも仕方ないことだ。
裏切ったつもりはなくとも、天鬼に寝返ったことは事実なんだし。
「ニコには……誰も本当のことを言えてないっス」
「…………」
「みんな、どう言うこともできないんスよ…!!」
「…じゃあもう死んだことにでもすれば?」
「ッ、本気で言ってるんスかカシラ…!!!」
勢い任せに掴まれた、胸ぐら。
びくともしない俺に何を訴えかけようとしているのか、ジローは唇を噛みしめて握る手に力をぐっと込めてきた。



