「なにが……、あったの…」
言葉と手話を同時に使った。
もう今ではジローもある程度の手話で私とコミュニケーションを取れるのだから、説明くらい簡単にできるはずだ。
矢野さんだってぜんぜん教えてくれないの。
どうしてここまでみんなが焦った顔をしているのか、なんにも知らないんだ私は。
「ゆうみに、なにか、あった……?」
「…………」
「ジロ…!」
「………っ、」
そんな苦しそうな顔をするくらいなら、言っちゃったほうがラクだよ。
ゆうみのことなんでしょ…?
ゆうみに何かあったんでしょ…?
生きてる?
ねえ、死んじゃったりしてないよね……?
「なんもないぞ。ニコは心配しなくていーんだ」
そう言われてしまえば。
聞こえない私は知りようがなくなってしまう。
ジローは私に真実を隠しつづけて、嘘を貫き通すことを選んだのだ。
「あっんの野郎……、よりによって天鬼に行きやがったとは…」
「組長、もしや俺たちに復讐をするつもりでは…」
「あの甘ったれにそんな根性があるわけねェだろう。あいつひとりで天鬼を動かせるとも思えねェ。……だが、」



