「…矢野おまえ、子供の扱いは得意だろ?俺がここにいない間はこいつの世話してもらうから」
「この娘には身を削らせるのでは?」
「ああそうだよ。のためにもニコが使いもんにならなかったら意味ないでしょ」
「にこ…?」
「こいつの名前」
ずっとなにを話しているんだろう。
温かいご飯はどのくらいで冷めてしまうんだっけと、泣き疲れたあとの不安はそんなところにもあった。
「…名前を付けたということは、もう2度とカタギには戻さないつもりですか」
「だって戻る場所あんの?母親失踪して、あの団地も契約解消。この歳で俺たちに借金まであるんだ」
「…そう、ですが」
「おまえがいつまでも幹部止まりな理由がよーく分かったよ。……あ、そうだ」
トントンと、急に肩を軽く叩かれる。
【甘いのなら食べる?】という文字と、無理にでも緊張をほぐしてこようとする笑顔があった。



