『おまえは勉学だけをやっていればいい』
その言葉が、私には「進学しろ」という言葉にも聞こえてしまって。
よく、わからなかった。
ゆうみに似ていた。
悔しいけれど、私が大好きなひとに、似ていたんだ。
「うそだろ…、天鬼って……まさか寝返ったってことか…!?」
「寝返った…?んなの雲雀会を裏切ったの間違いだろ!!」
「そんな…、カシラに限ってそんなこと……」
「あの人はもうカシラじゃねーだろ。ウチのカシラは千里さんだ」
屋敷中が騒然としていたのは、それから数日後のこと。
音がないぶん、緊迫感や圧迫感として私は感じ取ることができる。
この緊張感は、いいものではないって。
「ジロー…!」
「………ニコ、」
だれを呼び止めても足を止めてくれないから、最後の希望として通りかかったひとりの名前をめいっぱい呼ぶ。
やっと立ち止まって振り返ったジローは、とても悲しそうな顔をしていた。



