「…はよ」
「……おはよう」
「行くぞ」
「……うん」
海人もまた、ゆうみが帰ってこなくなったことを知っている。
最初の頃は「恨みを買いすぎてとうとう命でも狙われたんじゃね」と冗談混じりに言っていたけれど、いよいよ笑えなくなってくるとゆうみの話を一切としなくなった。
私のことを思ってなのかは分からない。
ゆうみがいなくなったとしても海ニコになることはないまま、私たちは私たちにしかない唯一無二な関係で今も並んでいる。
「ニコ、おまえぜったい大学行けよ」
海人も口癖のように言ってくる。
みんな、おかしいよ。
いちばんおかしいのは新しい若頭さんだ。
あの人とは私もわざわざ話したいとは思わないし、ゆうみを追い出した人間として認識しているからハッキリ言って嫌いだ。
でも1度だけ、私が気分転換に屋敷内の掃除をしようとしたとき、声をかけてきたことがあった。



