「完全に怖がっていますね」
「は?なんで?」
「初めての場所で、ましてや拉致られた場所で出される食事ですよ。普通に考えて手を付けられるほうがおかしいでしょう」
「そんなもん?」
毒が入っているかもしれない。
わたしをここで働かせると言っていた。
信じていい人なのか、ダメな人なのか、わからない。
ぎゅるるるるるーーー。
………あ、またお腹が凹んじゃった。
「ほんと昨日から腹の音は正直なんだよなあ、こいつ」
「…腹は常に減っているんでしょうね」
「じゃあどーすりゃいいわけ?無理やりでも口に突っ込めばいいって?俺それ、ガキにする趣味ないけど」
「やめてあげてくださいそれだけは。絵面的に最悪です、アウトです」
「ぅ、」と、わたしは振り絞った。
ふたりして見つめてくるから、声を出せたということ。
「おか……ぁ…っ」
おかあさん。
こわいよ、怖い、こわい。
助けを呼ぶみたいに何度も繰り返す。



