「───遅い」
「…あ、ゆーみ兄」
「あ。じゃないんだよ。うちのニコちゃんをこんな時間まで連れ回して、小指でも切り落とされたい?」
屋敷の前に、人影。
薄暗いなかでも射抜いてくる瞳を、意識とは反対にパッと剃らしてしまう。
「違うよこいつが図書室で遅くまで勉強してて、俺がわざわざ送ってやったんだ。逆に感謝して欲しいのは俺のほうだよ」
「…おまえほんと生意気になったよね」
「そんなの出会った当初からじゃんか」
「いいや、今のおまえはそこに可愛げのなさが追加されてとんだクソガキになってんだよ」
「……軽い反抗期だとでも思え」
「おい、誰にそんなナメたクチ利いてんだよ殺すぞ」
「…………スミマセンデシタ」
ゆうみと海人もまた、身長差が少なくなった。
私とゆうみは変わらないのに、海人ばっかり羨ましいよ。
「…あのさゆーみ兄、ニコめちゃくちゃ勉強してるよ。うちの学校ではもう進学とかの話も出てると思うし」
「……言われなくとも分かってるさ」
「…じゃ、そーいうことだから」



