“ひとりで帰れるよ”
“いーから。俺だってゆーみ兄からいろいろ頼まれてんだよ”
「………はい…」
こんな一面も増えて、こんな会話も増えて。
私が勉強をいつも教えてあげていたこと、きっと海人は忘れちゃったんだ。
「…迷惑かけて……、ごめん、海人」
「……べつに迷惑じゃねーし」
“ちゃんと教えて”
”バカ”
それだけを手話で伝えて、海人はグラウンドへと戻っていってしまう。
本人いわく「俺はニコの保護者でもあるから」と豪語しているけれど……。
(私のほうが2歳も年上だもん…)
運動部の部活が終わるまで、まだ40分近くある。
こうなったらもう1度図書室に行って時間を潰すしかなさそう。
「────……!」
「やっと起きたかバカニコ」
「……かい、と…、ぶかつ、」
「もうとっくに終わったっつーの」



