「おはようございますカシラ!!って、そいつなんすか…?」
「拾った」
「拾ったあ!?ちょっ、矢野さんどういうことっすか…!?」
「……詰めようとした女の身代わりだ」
お家というよりお屋敷だ…。
どこに続いているのか分からないなかで外を覗いてみると大きな駐車場があり、何台も停まっている黒い車。
スーツを着た男性、派手なシャツを着た男性、明るい髪色をした若者。
彼が通るだけで丁寧に頭を下げて、そのあと揃いに揃って眉を寄せ、わたしを指さしてくる。
「………ねえ。ぜんぜん食べないけど」
「……………」
「い、ら、な、い?」
「…っ、」
焼き魚と、分厚い卵焼き。
お味噌汁に、お漬け物。
運ばれてきた温かい香りと湯気の昇った朝ごはんを前に、正しくない反応。
連れて来られた一間で手を付けることができないのは、全身が震えて仕方ないからだ。



