全身が凍った。
思わずゆうみの腕にしがみつく。
聞こえているゆうみはそれ以上を感じているはずだというのに、私に甘さを与えてくれた唇はやはり弧を描いていた。
「復讐は復讐を生んで悲しみを連鎖させるだけだ。復讐は解決の糸口なんかじゃない、むしろ逆。本当の強さは許すことだって……いずれ嫌でも分かる日がくるだろうよ」
「………、」
「こんな世界に身を置いてる人間が言うには間違ってるかもしれないけど、もう俺にそんなことさせないでくれよ。俺だってひとりの───…パパなのよ」
切なそうな笑みを浮かべて、彼は車に乗り込んでいった。
呆然としているゆうみはしばらくして「あきれた」と、こぼす。
「あれが天鬼の右腕とか…笑える」
ゆうみ、もういいよ。
もう頑張らなくていいんだよ。
どうしてか、そう言ってあげたくなった。



