「お、逃げた」
「………ぅぅ…っ」
「あ、転んだ。ついでに泣いた、最終的にお腹も鳴った。…忙しいねおまえ」
わたしが駆け出したとしても、何ひとつ空気を変えなかった。
もはや囚われている。
もう逃げ場なんかない。
そう思わせられたわたしにできることなんか、床にうずくまるように泣くだけ。
「カシラ、そういえば昨夜はあれから何も食べさせていません」
「あー、そうだっけ。やっぱ子供って食べないと死ぬの?」
「生き物はみんな食べなければ死にます」
ひょいっと宙に浮いた身体。
これも昨日と同じこと。
見えない首輪がすでに繋がってしまったような絶望感があるのに、どうして彼の笑った顔は可愛いキャラクターたちを思い出すんだろう。
「バーさん。悪いんだけど朝ごはんもう1人ぶん作ってもらっていい?あ、できれば優しい味付けでヨロシク」
「かしこまり…ました…?」
知らない顔が次から次に現れる。
抱えられながら長い廊下、何枚もの襖とお部屋がたくさん。
割烹着姿の女性はペコリとお辞儀をすると、不思議そうな顔でどこかへ足早に向かっていった。



