アタッシュケースに入った札束から始まって、スーツの内側に必ず着ている防弾チョッキ。
黒や銀色の拳銃を用意している男たちだって何度か見てきた。
私はもう半分くらいは、この世界に染まっている。
“お友達、ゼロに戻っちゃったよ”
「最高じゃん?」
“プールに落とされちゃったの”
「うーわ。ベタすぎ」
“障害者って、いっぱい笑われちゃった”
「……なら俺は、そんなショーガイシャのおまえが好きなのかもよ」
小馬鹿にして笑いながらも“何事もなくてよかった”と、その顔は言っていた。
「いたい…?」
「…そりゃね、ビンで殴られれば痛いに決まってる」
“まったく”と、ほらここでも手話はウソをつく。
「…なおる……?」
「…変わんないね、おまえ」
ゆっくり伸ばした手で触れた、あたまに巻かれた包帯。
私が触っても怒らないゆうみは、鋭さを消すようにふわりと微笑んだ。



