「2度目はない」
「…はい」
それから静かに矢野さんが部屋から出ていくと、スイートルームらしきホテルルームにふたりきり。
「かえろ、ニコ」
「…ぇ…?」
「とりあえず必要な挨拶回りは終わったし、逆に俺がいたらみんなをビビらせるだろーから」
本当に帰る準備してる…。
さすがに私も今は乾いた服に着替えて、風邪を引くことはまぬがれた。
「ゆうみ、」
「あ、帰りたくない?んなら泊まってく?」
さっき、どうしてあんなことしたの……?
緊張してまともに顔が見れない私と反対で、やっぱりゆうみは慣れている。
モヤモヤはしない。
歳の差は最初から分かっていたことだし、元カノさんの写真も見ている私だ。
「そしたら俺、ふつーに手ぇ出すと思うけどね」
「……ゆうみ、」
あの場を静めるために、あんなことをしたの───?
うん、でも良かった。
そうだよ、だとしても、いい。



