「ぅ…ン…っ!」
くるしいよ、ゆうみ。
うまく呼吸だってできないし、思考停止していた脳は激しさと甘さだけで動くことがあるなんて。
逃げようとすると角度を変えてまで離してくれない。
ほらね、このひとって、かなりしつこいの。
「どっ、どういうことだ…?彼女は雲雀会の人質ではなかったのか……?」
「そういうカンケイなら話は別だ。姉ちゃんたちよ、ヤベェ女に手ェ出しちまったんじゃねェのか?」
「ふっ、やはりカシラでもある男だ。ちと危ねェが、大胆さは花丸だな」
へんな味。
鉄にしょっぱさが合わさったような、想像もしたくない味だった。
でもね、すごく私たちらしいなあって。
「────…ニコちゃん、俺このままだとたぶん出血多量で死ぬから。あとで手当てして」
そんなにやさしい顔で笑うんだね。
この顔はきっと私にしか見せない。
だってこの人だって、
私のことだけを見ているから───。



